増税か赤字国債か 防衛財源、識者に聞く
・政府は防衛力強化のため2023年度から5年間の防衛費総額を43兆円に増やし、法人税、所得税、たばこ税の増税や決算剰余金などを財源に充てる方針だ。
・しかし、増税時期の議論は先送りされた。復興財源の一部を転用する仕組みには国民から異論が多く、先進国で最悪と言われる財政状況でも与党から赤字国債の活用論がやまない。国際情勢が緊迫する中でいかに防衛財源を確保すべきか。東京財団政策研究所の森信茂樹研究主幹とBNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストに聞いた。
◇フィクション含む防衛財源
東京財団政策研究所の森信茂樹研究主幹
―今後5年間の防衛力の強化と財源が決まった。評価は。
・防衛力強化は必要だと思う。ただ内容と予算、財源の三つをセットで決めると言っていたのに、そうなっていない。まず国内総生産(GDP)比2%が決まり、その後5年間の防衛費を43兆円にすることが、岸田文雄首相と財務、防衛両相で決まった。(防衛力強化の)内容は議論していない。国民が怒るのはすごく分かる。中身が決まっていないのに、請求書だけ押し付けるのは絶対おかしい。まず何に使うかを議論しなければ、増税は無理だ。
―首相は借金を回避したと説明したが。
・財源スキームには、フィクションのような部分も含まれている。2027年度に22年度比で約4兆円上積みするが、1兆円強の増税以外は、いつでも赤字国債に置き換わり得る。
―どういうことか。
・例えば、(4兆円のうち)7000億円は決算剰余金を充てるという。だが決算を締めてみないと、税収が上振れするかどうかは分からない。さらに剰余金は災害復旧費や景気対策を裏付ける補正予算の財源であり、それがなければ補正の財源は赤字国債になる。
―復興特別所得税の転用にも批判がある。
・東日本大震災の復興財源に影響を及ぼすものではないが、誤解を生じさせた。所得税は、金融所得課税の見直しでやるべきだった。岸田首相は「新しい資本主義」で(所得が1億円を超えると税負担率が減る)「1億円の壁」を問題にしてきており、金融所得課税は格差是正の効果も大きい。財産が多く、戦争になったら失うものが大きい人たちの負担を多くすることに国民の支持が得られないとは思わない。政権の支持率が低下し、そこまで踏み込む力がなかったのだろう。
―防衛論議を振り返って。
あまり言われていないが、防衛費をGDP比2%にするということは、分母の経済が大事だということだ。GDPが落ちれば防衛費も減ってしまう。防衛予算の規模にばかりこだわる人はそこを認識すべきだ。防衛装備だけでなく、経済を活性化することが結果的に防衛力につながる。
12月28日 https://news.yahoo.co.jp/articles/b89db9d38788474aec2330c48f299254056f3bd9
森信茂樹
森信 茂樹は、日本の財務官僚。中央大学大学院法務研究科特任教授。東京財団上席研究員。元財務省財務総合政策研究所長。大阪大学博士。
ネット上のコメント
・次世代にツケを残すなとの意見や、国防を強化すべきだなどの意見が散見されるが、日本の賃金は過去20年間で0.4%しか増えていない。 これに対して韓国の賃金は43.5%伸びている。 この結果、15年の時点で韓国に逆転され、その後も差は開いている。 日米欧主要7カ国と韓国の平均賃金を検証するとほぼ昇給ゼロ状態なのは日本とイタリアだけ。 現在の日本は内部をシロアリに食い散らかされた張子の虎です。 土台がボロボロの状態を放置したままでは、それこそ次世代に対して無責任だし、外敵の侵略に対する国家の防衛と並行して考えないといけないことは多い。 歴史をみれば、内部から崩壊した国家も存在したのだから。
・経済成長していれば別にGDP比の予算を増やさなくても勝手に増額していくんですよね。 経済成長させる経済政策が求められているし、教育や科学技術という将来の税収の種になる部分にもっと予算をつけるべきです。
・総理は約束は『聞く耳』蓋を開ければ 今じゃ『聞かない耳』と言っていた。 聞かないなら退陣に相応しい。
・東京財団と言えばバリバリの財務省下請けばかりだと思ったら割りとバランスの取れた事を書いていてちょっと驚いた。財務省直下だからこそどうしようもない記者、コメンテーターやアナウンサーとは流石に発言が違うのだろうか。
・増税でも構わないけど、防衛財源にするのだけはやめてほしい。 もっと社会保障充実や男女共同参画に予算を費やすべきだ。