黒木華「女優ですとはまだ言えない」…デビュー13年、国内外で演技力評価も満足せず
・女優の黒木華(32)が、舞台やドラマ、映画界で欠かせない役者として存在感を増している。デビューから13年、どんな作品や役にもなじみ、実力派としての地位を築いているが「自分の芝居に満足したことはない」と自己評価は厳しい。13日に公開された映画「イチケイのカラス」(田中亮監督)では、超ロジカルな弁護士役を好演している黒木が、“女優”を名乗ることへの思いや、人生の目標を語った。(奥津 友希乃)
・決して背伸びをした考え方や言葉選びはしない。柔らかな雰囲気の中にある芯の強さが魅力の人だ。 キャリアの出発点は舞台。演劇部に所属した高校時代、松たか子の主演舞台「贋作 罪と罰」に感銘を受けて女優になりたいと思った。大学在学時に劇作家・野田秀樹氏に見いだされ、2010年に本格デビュー。その高い演技力で、瞬く間に注目を集めた。 「お芝居の楽しさを知ったのが舞台。生でお客さんの反応が見えて、幕が開いても回数を重ねながらどんどん成長できる。年に1本以上は出演したいし、戻る場所でもあり、今の自分を試す場所でもあります」
・11年、蜷川幸雄さん演出の舞台「あゝ、荒野」出演時には、本紙の取材に「『女優』と名乗るのは、何かこそばゆい」と語っていた。演技派女優の代表格となった今はどうなのか―。 「いやあ、恥ずかしいですよ。『女優です』とはまだ言えないです。(18年公開の映画「日日是好日」で初共演した)樹木希林さんとも『“女が優れてる”って書くってすごいですよね』って話したことがあるんです。私自身は何も優れていないし、それなら役を演じる者という『役者』の方がしっくり来るのかな。役を演じることですら、もっと頑張らなきゃいけない場所にいると思ってます」
・14年、山田洋次監督の映画「小さいおうち」でベルリン国際映画祭の銀熊賞(最優秀女優賞)を受賞するなど、国内外でその高い演技力が評価されてきた。日本映画界を背負う一人としての期待もあるが、その自覚を聞くと「ないない、ないです」ときっぱり。謙遜ではなく、自分なりの向き合い方がある。
・「そういう一人に数えていただけることはありがたいですが、私は自分の人生しか背負えない。映画界の将来を背負うつもりがないというより、私にはそんな力はないと思うから。でも、自分が出ている作品に対する責任は絶対に背負います。『お芝居が好き』という気持ちを核に、作品のために演じたいです」
・「イチケイ―」は、ドラマ版(21年、フジテレビ系)の2年後を描く。超くせ者裁判官役の竹野内豊(52)と、エリート裁判官で弁護士活動中の坂間役・黒木による、コメディーを交えた演技の応酬は健在だ。
・「出演したドラマが映画化する経験は初めてなので、すごくうれしかったです。ドラマでおなじみの草野球のシーンでは、竹野内さんとアドリブで生まれた掛け合いもあり、楽しんでもらえるはず。コミカルな軽やかさと、真実や正義を追う重みが作品の魅力です」 黒木演じる坂間は、原作漫画では男性の設定。「原作の雰囲気を大事にしたかった」と髪形をベリーショートにし、声のトーンも下げている。真実を追い求める坂間の心の揺らぎを丁寧にすくう演技で、人間らしい魅力を吹き込んでいる。
・「坂間は、説得力が必要な役。それは、頑固さや独りよがりの正義感から来るものではなく、いろんな人や価値観に感化され、素直に吸収できるところが坂間のいいところ。自分もそうでありたいと思いますね」
・バディを組む弁護士役の斎藤工や、坂間と意気投合する役どころの吉田羊とは初共演となった。
・「斎藤さんは、決め切らずにその場でお芝居している感じがあって、すごく楽しかったです。作品で一番印象に残っているのが(物語終盤の)羊さんのシーン。圧巻というか、すごく真摯(しんし)なすてきなお芝居で、刺激を受けました」
・試写で本作を観賞し「作品自体はとても面白かったです。でも自分のお芝居はベストは尽くしたけど、もう少しできたんじゃないかと。満足はしていない」と自己評価は厳しい。約60本の映画やドラマに出演してきたが、意外にも「今でも映像は怖い。苦手な分野なんです」と明かす。
・がむしゃらに駆け抜けた20代から30代に突入し、考え方にも変化を感じている。 「20代は『まだ頑張れていない』と感じることばかりでした。でも、いろんな役を演じさせてもらって、30代になり『できないものはできない』と楽に考えることも大事なんだなと。いい意味で適当にやることを心掛けるようになりました」
・人生の目標は「かわいいおばあちゃんになること」という。
・「すてきな人になるには、経験や知識の積み重ねなのかなと思うんです。なので、最近は行ったことのない土地を旅したり、ダイビングの免許を取ったりしています。その経験が役者としての成長にもつながるし、人生を豊かにすることにつながると思うから」 挑み、もがき、楽しみながら、役者の道を自分なりの歩幅で歩んでいく。
◆黒木 華(くろき・はる)1990年3月14日、大阪府生まれ。32歳。京都造形芸術大3年の2010年、NODA・MAP「ザ・キャラクター」で舞台デビュー。16年「リップヴァンウィンクルの花嫁」で映画単独初主演。同年のTBS系「重版出来!」で連ドラ初主演。16年と21年に日本アカデミー賞最優秀助演女優賞を受賞。主な作品は、15年映画「母と暮せば」、19年TBS系主演ドラマ「凪のお暇」など。今年は、主演映画「せかいのおきく」など待機作多数。
2023年1月14日
https://news.yahoo.co.jp/articles/3f1f691743ae1200d89d4862efd8bfd83d5718ce
黒木華
黒木 華は、日本の女優。本名、同じ。 大阪府高槻市出身。京都造形芸術大学芸術学部映画学科俳優コース卒業。パパドゥ所属。
ネット上のコメント
・個人的には女性の俳優さんのことは「女優」と表現することに抵抗はないですし、男性の場合は「男優」と言えばいいと思いますが。一般には、セクシー系の方以外、「男優」と表現されることが少ないのも事実ですが。
・彼女ならではって言うか、独特の雰囲気を持っているので見ていて 引き込まれますね。 これからも活躍が楽しみです。
・透明感あるのに芯の強さを感じさせる素敵な女優さんです。 この方の怒鳴ったり声を荒げたりせずに「怒ってる」という内側の怒りを感じさせる演技や、根底には芯をしっかり持っている、という演技がすごく好きです。 鈴の鳴るような可愛らしい声色とのギャップで余計目力と表情が引き立つ。 パーツパーツは派手じゃないですが、しっかり存在感ある主演張れる女優さんだと思います。
・もうデビューして13年になるんだ。 駆け出しの頃、この人の演技観て、 新人なのに圧倒的な存在感と演技力のある人だな、って思った記憶がある。
・パッと見では現在の評価では美人とは言わないかもしれないけど、役者としてとても魅力的な人だと思う。
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