生まれ変われるならこの人になりたい
内館牧子さんの高齢者シリーズ第三弾として「老害の人」を読みつつ、まずは林真理子氏著書の「成熟スイッチ」を読了。
林真理子の大ファンであり彼女のことは本を全部読んでいるのはもちろんのこと、頑なにヴェールに隠し言及しない娘さんのこと以外は大体知っております。
作家とはある意味、自分の人生を切り売りしつつ世間に晒しながら生きていく職業の究極であります。
自分の思考回路までを全部、文章化して晒すわけですから…。
林真理子氏のことはエッセイしか読んだことのない人から小説を一年に何度も読み返すような私のようなヘビーファン、そしてビジュアルしか知らない(最近の若い世代なんて名前さえ知らなかったりして・・・)と思うわけですが、彼女のすごいところは当然、小説の面白さもさることながら、何もかもを手に入れようとしてしかもそれを実現してしまうパワーですよね。
生まれ変われるものならこの人になりたい、と切望するのは林真理子氏です。
バブル時代も超売れっ子作家時代も、社会的ステイタスこそ成功であるという清々しい価値観だった時代も、お金も自由も知性も何もかもを自分で手にした林さん。
そして、生まれが本屋の娘であったと親ガチャの凄さにも脱帽。
もう勝てる気がしません。
誰がどう足掻き、どんな素晴らしい小説を書こうとも彼女の人生には絶対に勝てないのではないでしょうか。
当然、若くて可愛くて今はチヤホヤされており高級ブランド時計をおじさんに買ってもらっている女の子など問題外です。
最新の著書である「成熟のススメ」では、彼女は「それでも人生はやはりプラマイゼロなのだなあ」と書いているのですが、その彼女のいう「マイナス」がなんと、期待していた著書がそんなに売れなかったなど…
この世に作家になりたくても絶対になれない人がいる中、彼女のいう「マイナス」はあまりにも眩しすぎますね。
何しろその売れなかった著書というのは、日経新聞の連載小説ですから。
今、日経新聞さえ読解できなくてTikTokしか視聴できない若者がどれだけ増えているのか、とはいえたった年齢差でいうと30〜40歳だというのに、ここまで日本が変わってしまるとはデビュー当時の林さんは全く予想もつかなかったでしょうね。
とはいえ・・・
とても読みやすい本ですのでオススメです。
が、彼女と同世代のバブル期の読者にしか響かないと思います。
価値観が違いますので。
私は林さんの本を義務として全て読むことにしておりますので読みましたが、改めて「読書浸りたいなあ」と思うこと以外は参考になる部分はあまりありませんでした。
でも、林さんができれば戻ってほしい時代へのメッセージはひしひしと伝わる一冊でした。