「深夜営業廃止」「値上げ」で苦境 ファミレスは生き残れるか? 専門家に聞く
・これまで「24時間営業」「手頃な価格で利用できる」といった印象が強かったファミリーレストランですが、近年は新型コロナウイルスや人手不足、原材料費の高騰などを理由に、深夜営業を廃止する店や値上げをする店が増えています。客離れも指摘される中、ファミリーレストランが生き残るには、どのような対策が必要なのでしょうか。飲食店コンサルタントの小倉朋子さんに聞きました。
・冷食の通販事業が好調
Q.そもそも、新型コロナウイルスの流行が始まった2020年以前からファミリーレストランの売り上げは、伸び悩んでいる状態なのでしょうか。
・小倉さん「ファミリーレストランを展開するサイゼリヤ、ロイヤルホールディングス、すかいらーくホールディングスの売上高は、2019年まで順調に推移していました。しかし2019年10月の消費税増税を皮切りに外食の客足が伸び悩み始め、さらに新型コロナウイルスの影響で自粛営業を余儀なくされるようになってから、急速に売り上げが減少傾向にあります。
・2021~2022年のファミリーレストラン業界の業績は、主要企業14社中、12社が前年比マイナスを記録しました」
Q.近年、ファミリーレストランの中には深夜営業を廃止し、値上げに踏み切る店も増えています。この取り組みは有効なのでしょうか。
・小倉さん「コロナ禍以前のファミリーレストランには、深夜から明け方にかけて利用する顧客が一定数いました。深夜に仕事をする多種多様な業界の人が、仕事終わりに食事やリラックスするための場所として利用したり、若い世代が友人同士と時間を共有する場所として利用したりしていました。
・しかしコロナ禍における自粛生活とともに、深夜労働の減少や生活スタイルの変化など、多くの要因により24時間営業の需要が減ったといえるでしょう。さらに景気の悪化も加わり、ファミリーレストランだけではなく他の業態の飲食店も含め、顧客の来店頻度が減っていることも、深夜営業の廃止につながっているのではないでしょうか。
・営業時間を短縮したことによる売り上げの減少と、人件費などの経費削減、原材料や固定費の増加といった点を比較した結果、やむなく値上げに踏み切る企業が増加しています。今は踏みとどまっていてもこのまま景気悪化が続けば、店舗を閉店する企業が増える可能性はあります」
Q.では、現在のファミリーレストランの強みについて、教えてください。深夜営業の廃止や値上げで強みがなくなったようにも感じますが、いかがでしょうか。
・小倉さん「近年、すかいらーくホールディングスやロイヤルホールディングスなど、大手各社が冷凍食品の通販事業に力を入れており、順調に売り上げを伸ばしています。商品のクオリティーは高く、家にいながらにして店の人気メニューと同じ味が食べられると評判です。
・人気の背景には、“安心感”があると思います。知らない店から注文することにためらう人もいますが、大手ファミリーレストランの定番メニューであれば、信頼性が高く、周知の味ですから注文しやすいでしょう。これは全国に知られている実績を持ったファミリーレストランならではの強みといえるでしょう。
・日本においては一部を除き、外食で食べ残した料理を持ち帰る習慣が確立されていませんが、自宅であれば食べ残した場合でも保存することができます。また、店側にとっても、保存性の高い冷凍食品であれば、食品の廃棄量が大幅に削減できますし、それにより材料費などのコストや人件費も減らせます」
Q.今後、ファミリーレストランが、他の飲食店との競争に勝つためにはどのような対策が求められるのでしょうか。
・小倉さん「先述のように、ファミリーレストランには全国に顧客を持ち、圧倒的なブランド力があります。そして、和食、洋食、中華など料理のバラエティーに富み、老若男女問わず受け入れられる味は、強みとも言えるでしょう。
・そのため、宅配や冷凍食品の通販といった提供方法を多様化させることで、相手の利用動機や食卓環境など、さまざまなニーズに対応しやすい業態といえます。さらに、定期的に新メニューを生む力があり、研究を重ねて今日に至る実績があります。それは、今後も顧客の信頼感につながるものです。
・また、深夜営業の廃止により人件費が削減された分、より丁寧な接客や、家族や高齢者にも気配りのあるメニュー提供などもファミリーレストランであれば可能です。
・生活スタイルが変わり、外食の頻度が減少した顧客も少なくない中、『たまに行く外食ならば、安心できる店が良い』『店では気持ちよく過ごしたい』といった顧客のニーズを裏切らない運営は必須です。一律ではない、よりきめ細やかなサービスが求められてくるのではないでしょうか。常に顧客の声に耳を傾け変化する姿勢は、ファミリーレストランの売り上げを左右すると考えられます」
オトナンサー編集部
ファミリーレストラン
ファミリーレストランとは、主にファミリー客層を想定したレストランの業態。モータリゼーションの進んだ米国のコーヒーショップを参考に日本で成立した業態で和製英語である 。外食産業の一つでチェーンストアとして営業するものが多い。略称は「ファミレス」。
ネット上のコメント
・仕事はもちろん大事です。 やりがいを持って楽しくやっている方も多いと思いますが、あくまでも自分や家族が幸せになるための手段でなければならないと思います。
・日本経済の浮き沈みによって、大きく左右されるのがファミレス業界。 高度経済成長期や、バブル期に隆盛を誇り、どんどん店舗を増やしたファミレス。 日本経済低迷により、合併や閉店を繰り返し、今や生き残りに必死。 日本人個々の収入が上がらない限り、どんな小手先の改革をしても、ファミレスの浮上はあり得ない。 日本経済を先頭で引っ張る政財界のトップが経済低迷、日本人の所得減少を招いているのは間違いない。
・商品やサービスの質はすごく高いし、記事の触れるように幅広い層に居心地の良い空間は作れていると思う。現場に問題はないでしょ。 生き残れるかは経営レベルでの対応次第だと思うな。
・私も子供が小さい頃は家族でファミレスに週1で行きました。 理由は簡単。妻に息抜きをしてもらい、子供の笑顔が見れるから。 それなら安いものでした。 当時美味しいと感じた料理は、現在の基準では美味しくない。 冷凍食品のレベルが上がり、またCockDoのような本格中華が楽しめるようになるとファミレスに行く理由がない。 ファミレスが衰退するのも仕方がないと思う。
・仕事柄夕飯は1人でとる事が多いので、カウンターのある店に(かつや、リンガーハット、すき家)に行きがちになります。ファミレスなので仕方ないですが、カウンターを作ってもらえる入りやすいです。 1人でテーブルだと気がひけてしまうので。